恋したくなる!!海物語:1年の終わりに 「君はトモダチ」後編/横浜クルージングパーティー



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1年の終わりに 「君はトモダチ」 後編

横浜にも今年は少し早い冬の気配。
気づけばもう師走。
行きかう人々も、どこかせわしなく感じる。
毎年同じことを思うのだが、やっぱり1年という時間の経過はあっという間だ。

この日は高校時代の友人、シオリと約束した日。
仕事で横浜に行くことを理由に上手いこと再会の機会を作ったのだ。

真昼の空気とは打って変わり、すっかり冷たい空気に入れ替わった20:00少し過ぎ。
「ゴメンね!待った?」
シオリの姿を遠くから確認できていたくせに、まるで今気づいたかのようにスマホをしまう僕。
「おう!お疲れ、お疲れ。俺もお客さん所さっき出てきたばかりでさ。ギリギリ来た感じ」

ウソだ。
本当は2時間も早く仕事は終わっていて、久々の横浜で適当に時間をつぶしていた。
くだらない男のプライド。
必要以上に仕事の忙しさをアピールしたがる自分がちょっと情けなかった。

それにしても二人きりでの飲みは、同窓会と違ってやはり雰囲気も違えば気持ちも全然違った。
あんなにメールラリーを軽快に繰り広げた僕とシオリも、時々流れる不意打ちの沈黙にはさすがに耐えられなかった。
強引に車の話題や、あの時の同窓会の話題で会話を繋いだ。
そりゃぁ無理もない。
高校卒業以来会っていない僕たちに、共通の話題など限られたものにしか過ぎないのだから。

とはいえ、30分、1時間と過ぎる時中、気づけば懐かしい高校時代のあの感覚に戻っていた。
久しぶりに楽しいと心から感じ、腹から笑った。

あっという間に時刻は23:00過ぎ。
「そろそろ帰ろうかなぁ。師走の金曜、終電ギリギリって最悪だもん」
シオリが切りだした。
翌日仕事だったが、僕にとって正直時間などどうでもよかった。
しかも横浜まで車で来ていたので終電を気にする必要もなかった。
“明日仕事無いならもう少し飲もうよ!”とか“酔い覚ましに夜のドライブでも!”
なんてセリフが次々と出かかったが、ノンアルコールしか飲んでいない僕に“酒の力”など有るはずもなく、結局全て飲みこんでしまった。

「じゃっ、そろそろ行きますか」
僕は壁に掛けてあったシオリのコートを手に取った。
「そうだね。あ、ありがとう!」
だいぶ酔いがまわっていたのか、立ち上がった瞬間、シオリはよろけて柱に身体を打ち付けた。
「おっと!危ない!大丈夫?」
とっさにシオリの腕を掴んだ。
「んもぉ。卑怯だよ!私だけ酔ってる。ケイスケ、全然飲んでないもんなぁ」
シオリは僕の左肩に少し強めのグーパンチを入れてきた。
「しょうがないなぁ。よし!家まで送るよ!」
なんと結果オーライの展開。
勝負続行の展開に、僕は勝手に運命を感じたりもしていた。

シオリは高校卒業後平塚市に転居。
現在も平塚在住だ。
帰路とは逆方向だけど、もう少しシオリと時間を過ごせることがとにかく嬉しかった。

「ケイスケとまさかの深夜ドライブ!なんかさ、ちょっと恥ずかしいね」
「いやいや、ホント危ないって!酔っぱらった女がホームでよろけてもしもの事があったら大変だからさぁ。ほらほら、しかもコート挟んでるよ!」
照れ臭くてついついムードを壊してしまった。
シオリは助手席のドアをもう一度開け、コートの裾を引っ張った。
「相変わらずケイスケって優しいんだね…」
さっきまで元気よく笑っていたシオリが急にうつむき小さくつぶやいた。
まるで試されているようだった。

それまでなんとか平静を装っていた僕だが、この時心は大きく揺れ動いていた。
ここは僕の出方一つで未来が変わる瞬間だ。
自分の気持ちに素直になるべきか否か。
いや、やはりシオリには彼氏がいるし…。
ほんの一瞬の沈黙だったが、とにかくいろんな考えが頭を駆け巡った。

「優しいかな?普通だと思うけど。
それよりその高そうなコート、俺のせいで汚れたとか言ってクリーニング代請求されるのとか勘弁だし」
一つ息を吸って冗談たっぷりに答えた。

それにしてもこのシチュエーション。
あれから何度となく振り返ったが未だに正解が分からない場面だ。

エンジンをかけ、ナビでルート確認。
「とりあえず駅の方向に向かうよ」
「うん。よろしく。」
BGMは営業のお供、B’zのベストアルバム。
この空気を変えるのに丁度良かった。
「わぁ懐かしい!ケイスケこれカラオケで良く歌っていたよね。」
シオリは無邪気に鼻歌を歌い始めた。
この時間が永遠に続いて欲しい!
ただただ単純にそう願った。

夜の国道134号線。
すれ違う車の数もぐっと減り、あっさりと由比ヶ浜までやってきた。

「普段東京の街乗りばっかりでさ。やっぱ海はいいよね。」
「うん!海はいい!晴れた日の昼間がイチバン!最高だよ。
ねぇねぇ今度ドライブ連れててってよ!」
「いやいや、それはダメだろ。シオリ、彼氏いるし。」
「え!?なんで!?
私達、トモダチじゃん!」
「まぁそうだけど。さすがにこっちは気使うよ」

シオリの気持ちを確かめたいと思っていたが、やはり答えは“トモダチ”・・・か。
大きなため息が出そうになった。

「でもね、高校時代、好きだったよ!ケイスケのこと。」

「・・・今さら言うなよ。」
さっき殺したはずの大きなため息と共に15年分の本音が今ここで漏れた。

帰り道。
僕はこの日の一部始終を思い返しながら車を東京方面に走らせていた。
「“好きだった”って。…過去形かよ。」

海岸線が現れた。
少し夜風にあたりたくなり、車を止めた。
自販機で買ったホットコーヒーで手を温めながら、夜の江ノ島を眺めていた。

一年が終わろうとしている。
珍しく今年はいろんな出来事のあった年だった。
元カノのとの別れ、そしてシオリとの再会。
どれも辛い結果だったけれど、誰かを思う事って実は人生充実している証拠なのかもしれないと、今なんとなくそう感じているところだ。
全てを過去のものと言いきるにはもう少し時間がかかりそうだけど、大人になってしまった今でも、まだ冒険出来るかもしれないという自信は出来た。
冒険が出来るなら、近い未来、あの海岸線を一緒にドライブ出来る人が横にいるかもしれない。
そう思えたタイミングで偶然にもシオリから写メが届いた。
シオリと母親と車のスリーショット。
納車が済んだようだ。
ピカピカの新車に満面の笑みの親子。
それにしてもおばさん、ずいぶん老けたなぁ。
そんなことを思いながら、好きだった人の笑顔のお手伝いが出来たこと、少し嬉しく思った。